メンバーからの評価を気にせず自分の意見を胸を張って言える環境、そのような場を「心理的安全性が高い」環境と言います。
心理的安全性が確保されていると肩の力を抜いた状態で仕事に向き合うことができるため非常に高い生産性を出すことができるようになります。
2012年にGoogleが「心理的安全性がチームの生産性を高める」と発表したことにより各企業が心理的安全性の向上を目指すようになりました。
しかし、心理的安全性を追い求めていく組織・チームがおちいる3つの落とし穴があります。
- 気を配りすぎる
- 全員の合意をとる
- 話し合いはすべてを解決する
この落とし穴にはまってしまうと、気兼ねなく発言はできるが生産性が低い「ぬるま湯組織」になってしまいます。
正しい知識と対処法を理解していれば落とし穴を回避して生産性の高い組織・チームを作ることが出来ます。
そこで当記事では、心理的安全性を正しく理解して組織・チームのパフォーマンスを最大限に発揮するための知識と技術を徹底的に解説します。
基礎知識および心理的安全性を高める方法を解説した後に注意点として「心理的安全性の落とし穴とその回避方法」を説明しますので最後までお付き合いください。
心理的安全性とは
心理的安全性とは、組織の中で周りの評価を気にせずに自分の考えた事や気持ちを安心して発信できる状態のことです。
1999年に経営学者エイミー・エドモンドソン教授が論文で発表したキーワードであり、心理的安全性を高めることによる効果は様々な研究で実証されています。
ぬるま湯組織とは
ぬるま湯組織とは、仕事に対するメンバーの意識が低くモチベーションや意欲が見られない組織のことを指します。
「心理的安全性が高い」=「自由な発言・行動ができる」ではありません。
心理的安全性が高い状態とは、自由な発言・行動ができる環境でメンバーやチームが最大限のパフォーマンスを発揮できることを指します。
心理的安全性が高い組織とは
テレビなどで見かけるApple社の職場を想像してみてください。
社員一人一人がイキイキと仕事をしているが決して手を抜いているのではなくメンバーやチームが相互に能力を高めあい、会社として素晴らしい成果を上げている姿が浮かぶと思います。
その姿こそが心理的安全性が高い状態です。
心理的安全性を高めることによるメリット
数多くの研究で心理的安全性を高めることによる効果が実証されています。
- チームの業績向上
- イノベーション創出
- プロセス改善の創出
- 意思決定の質的向上
- 知識共有の促進
- 組織学習の促進
心理的安全性が高いとコミュニケーションが活発になるため、目標を達成するスピードが向上します。
また、仕事へのやりがいや責任感が向上するため成果物の質も向上します。
さらに、他者への尊重も生まれるため失敗に対して寛容になり問題解決に向けて生産的なコミュニケーションをとることができるようにります。
その結果、個人として大きな充実感を得るとともにチームとしても大きな成果を上げることが出来ます。
Google「プロジェクト・アリストテレス」
2012年にGoogleが「高い成果を生むチーム」が持つ成功因子を発見することを目的に「プロジェクト・アリストテレス(Project・Aristotle)」と称して生産性改革プロジェクトを実施しました。
プロジェクト概要
プロジェクト・アリストテレスは複数チームの活動をモニタリングし、成果を出すチームにはどのような特徴があるかを抽出することを目的とした実験です。
リサーチ対象のチームとして、職種や業績の偏りを排除するために世界中からエンジニア系115チーム、営業系85チームの計180チームを抽出しました。
チームの評価基準としてはマネージャー視点、リーダー視点、メンバー視点、実績の4つの視点から総合的に評価しています。
検証方法としては、「成功するチームの共通点」として仮説をできる限りリストアップし、徹底的なモニタリングを行っています。
プロジェクトの成果
初めはメンバー編成を中心にモニタリングしていましたが思うような成果が出なかったため、次に「集団規範」に着目するようになりました。
その結果、「成功するチームの集団規範」における共通点として「均等な発言機会」「社会的感受性の高さ」があることを発見しました。
集団規範:
組織で活動していく中で自然に形成させる価値観や行動の判断基準のこと
また、Googleの社内事例から個人が仕事とプライベートで違う顔を使い分けることがチームの成果にマイナスに働いていることを突き止めました。
Googleはこれらを総合的に考察して最終的に「心理的安全性がチームの生産性を高める」と結論付けています。
「均等な発言機会」の創出
発言が特定のメンバーに偏るチームより、メンバー全員が均等に発言できるチームの方が生産性が高くなる。
「社会的感受性」の高さ
相手の表情や言動を見て、思いを読み取ることが出来る感受性の高さがチームの生産性向上に貢献する。
他者理解と共感が重要である。
5つのチーム成功因子
Googleは心理的安全性がチームの成功因子であることを突き止めた後も研究を続け、最終的にチームとして成功するための優位性を持つ5つの因子を特定しました。
①心理的安全性
対人関係の不安を感じることなく誰も自分を馬鹿にしたり罰したりしないと確信できる状態です。
②~⑤の基盤であり、最も重要な因子となっています。
②相互信頼
自分だけでなくチームメンバーも質の高い仕事をしていると確信している状態です。
問題が発生した際も責任転嫁をすることがない関係性が求められます。
③構造と明確さ
次の3つの要素が明確であることがチームが成功するためのカギとなります。
- 仕事で要求されていること
- 要求を満たすための実行計画
- メンバーの行動がもたらす成果
④仕事の意味
仕事そのものや仕事の成果に対して目的意識を持てる状態、つまりメンバー全員がやりがいを感じていることが成功につながります。
- 経済的な安定を得る
- 家族を支える
- チームの成功を助ける
- 自己表現する
⑤インパクト
自分の仕事が組織あるいは社会において大きな意義を持っていると確信できる状態であることが成功につながります。
これら5つの成功因子には順序性があり、①→⑤の順ですべてを満たすことが出来れば成功するチームが構築できていることになります。
当記事では①心理的安全性を説明していますが、②~⑤については下記書籍で解説されています。
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心理的安全性を阻害する要因
先述のエドモンドソン教授は人間関係のリスクが心理的安全性を阻害する要因であり、中でも4つの不安が主な原因であると指摘しています。
- 「無知な人物」と評価されることへの不安
- 「無能な人物」と評価されることへの不安
- 「否定的な人物」と評価されることへの不安
- 「邪魔な人物」と評価されることへの不安
日本の職場では、他者からのどのように評価されるかを常に気にしながら仕事をすることが常態化しています。
しかし、この当たり前の考え・行動が生産性を落としている原因でした。
つまり、これら4つの不安が無い職場ほど高い生産性を出すことが出来るのです。
「無知な人物」と評価されることへの不安
「知識がない」、「頭が悪い」と評価されてしまうことへの不安です。
業務で不明点がある際に「こんな簡単なことも知らないの?」と思われないか不安になり、上司や同僚に質問できなくなってしまいます。
そうなってしまうと、相談すること自体が不安になり必要な報連相の質が低下してしまいます。
「無能な人物」と評価されることへの不安
「仕事が出来ない人物」というレッテルを貼られることへの不安です。
「こんな簡単なこともできないのか」と思われないか不安になり、支援を求めることができなくなったり、失敗を認めなかったりするようになります。
「否定的な人物」と評価されることへの不安
反対意見を言うことで、人間関係や自己評価に傷がつく事への不安です。
会議の場で間違った方向の決定がされることに気が付いたとしても反対意見を言うことで「人の意見を反対する奴」だと思われないか不安になり、発言できなくなってしまいます。
その状態が続くと自分の意見を隠して仕事をするようになってしまいます。
「邪魔な人物」と評価されることへの不安
調和を乱す人物、面倒な人物と評価されることへの不安です。
自分の発言で議論が発散したり、決定が覆った場合に「関わると面倒な奴」と思われないか不安になり、自分から提案や発言をしなくなってしまいます。
心理的安全性のジレンマ
「無知な人物」「無能な人物」と評価されることへの不安は、日々激しい議論が展開されている職場で起こりやすい傾向にあります。
このような場でメンバーに不安を感じさせないように人間関係に気をつかいすぎると、今度は「空気の読みあい」が発生します。
「空気の読みあい」が行われている職場では「否定的な人物」や「邪魔な人物」と評価されることへの不安が発生してしまいます。
メンバーが人間関係に気をつかい過ぎずに遠慮なく自分の意見を言えること、またメンバーが常にこの意識をもって仕事に臨めることが大切です。
ぬるま湯にならずに心理的安全性を高める方法
心理的安全性を高めるためのプロセスとしては「共感しあえる場の構築」を行い、その後「価値を創出できる場の構築」を行っていきます。
メンバーが自然に共感しあい、チーム内の関係性を高めるための3ステップ
- 自然体に振る舞う
- 他者を尊重する
- 相互理解
信頼関係のあるメンバーが意見を出し合い、価値を創造するための3ステップ
- 目的の共有
- 第三案の共創
- 安心感の醸成
「共感しあえる場の構築」を行うと心理的安全性が高まりますがそこで満足してしまうとぬるま湯組織になってしまいます。
心地よく仕事ができる場を構築した後に「価値を創出できる場の構築」を行うことで組織として生産性が高く成長し続けることができる本当の意味での心理的安全性が高い組織を作ることが出来ます。
共感しあえる場の構築
共感しあえる場の構築には「自然体に振る舞う」「他者を尊重する」「相互理解」の3つが必要だと説明しました。
これらについて1つずつ解説します。
1.自然体に振る舞う
心理的安全性を高める上で最も基本となることは、周りの期待に応えるためのビジネスマンとしての姿を演じるのではなくありのままの自分の姿でいることです。
ビジネスマンとしての堅苦しい姿のまま心理的安全性を高めるためのコミュニケーションをとっても、どこかで歯車がうまくかみ合わずギクシャクし始めます。
行動の根拠が「したい」ではなく「しなくちゃいけない」になっていないでしょうか。
賞賛をえるため、良い関係を維持するため、失敗しないため、このような考え方に縛られているうちは自己充実感が得られません。
自分の人生は自分でコントロールしてください。
自分本来の感覚や感情を尊重してください。
また、脳科学では、人間は自己と他者そして社会を結ぶ思考を持っていることが明らかになっています。
本来、人間の脳は人のためにつくすことに大きな喜びと幸福を感じる仕組みになっているのです。
他人の喜びを自分事のように喜んでください。
自分の優先度を大切にしつつ、他者に貢献して、それを喜びとすることを意識できるようになると自己肯定感が強まっていきます。
人間としての「本当の自分」に対する自信を持てるようになれば、自分の本音をおそれることなく話せるようになります。
NG:人の期待に応える
OK:自然体の自分に戻る
2.他者を尊重する
他者を「利益を上げるための道具」と考えていると組織の心理的安全性を高めることはできません。
「異なる価値観を持つ対等な人間」として認め向き合うことが大切です。
家族や友人と接する際は、相手の気持ちを尊重して「損得勘定」ではなく「善意や常識」にフォーカスしているのではないでしょうか。
一方、仕事となるとメンバーを役割や機能を求める存在として見ている節はないでしょうか。
ビジネスだから当然だという意見もあると思います。
しかし、心理的安全性を高めるという視点からみると、「気持ちを尊重する関係」と「役割や機能を求める存在」のどちらが効果的かわかりますよね。
心理的安全性を高めるためには相手を1人の人間として尊重することが大切であり、認めることで心から共感できる関係性が生まれてきます。
NG:他者をコントロールする
OK:他者を人間として尊重する
3.相互理解
初対面であっても出身地が同じであったり同じ趣味があることがわかると一気に心の距離が縮まったという経験をお持ちの方も多いと思います。
飲みの席でプライベートや自分の失敗談を話したことをきっかけに関係が深まることもあります。
相手のことを「自分に不利益をもたらす存在ではない」と確信することで、警戒心が解かれ相互信頼があつくなります。
このようにビジネスライクな付き合いでなく本音で話し相手のことをお互いに理解しあう関係になることで、心理的安全性を確保することが出来ます。
距離を近づけるためにはまずは「笑顔」です。
自分から笑顔を作り、相手の警戒心を解く努力をしましょう。
NG:ビジネスライクな付き合い
OK:本音で話せる間柄になる
価値を創出できる場の構築
共感しあえる場の構築が出来たら次はチームをまとめ成果を上げるフェーズに入ります。
価値を創出できる場の構築には「目的の共有」「第三案の共創」「安心感の醸成」の3つが必要だと説明しました。
これらについて1つずつ解説します。
1.目的の共有
メンバー全員が「組織の存在意義」や「顧客に提供している価値」などの目的を共有できていることが大切です。
リーダー1人が顧客の方を向き、メンバーはリーダーの方を向いていては生産的な仕事はできません。
メンバー1人1人が顧客の方を向くことで、リーダーの意見に従うだけでなく「顧客のために最善の案」を考えるようになりより価値の高い仕事ができるようになります。
「顧客」や「組織の目的」をメンバーに意識させるためには、指示を出す際に「したいこと(WHAT)」だけでなく「その理由(WHY)」も合わせて提示することを徹底してください。
それによりメンバーは意図を理解し、向くべき方向がリーダーではなく「顧客」に変わっていきます。
NG:意識を人間関係に向ける
OK:意識を価値創造に向ける
2.第三案の共創
怒りや落ち込みと言った負の感情はチーム全体の心理状態に影響します。
人は持っている情報のみで先を想像し勝手な結論を出してしまいます。
例えば、少しコミュニケーション能力が低いと感じているパートナーの仕事が遅延すると、単純に能力の問題と決めつけて勝手に落胆するリーダーがいたとします。
しかし、決めつけなしに会話をしてみると実は専門用語がわからずに調べながら作業をしていたために進捗に影響していたことがわかればサポートの仕方が変わります。
問題が発生した際や人から反論された場合は勝手な決めつけで発言せずに、一つずつ事実を確認し、本当の問題はどこにあるのかを建設的に探し出すことを意識してください。
NG:思い込みで先走る
OK:建設的に第三案を共創する
3.安心感の醸成
髪型一つで気分が変わるように、感情というものはとても揺らぎやすいです。
ニューサウスウェールズ大学で実施された実験では「性格が悪い」「怠け者」「ネガティブ発言が多い」人物がチーム内に1人でもいたらそのチームの生産性は30~40%も低下するという結果が出ています。
しかし、チームの中に「対話の促進」「個々の尊重」「未来志向」を大切にし行動できる人物がいれば先のマイナス要素を持った人物の影響を打ち消してくれるという結果も出ています。
「安全なつながりを構築するような態度」を意識的にとることでその場に安心感が醸成されていきます。
- 対話の促進:メンバー間の交流を大切にして対話を促進する
- 個々の尊重:個々のメンバーを独自の存在として尊重する
- 未来志向:チームの関係はこの先も続くということを示唆する
NG:場の雰囲気にのまれる
OK:場に安心感を生む
リーダーとしての振る舞い
心理的安全性を壊すも確保するもリーダーの思想や行動が大きく影響します。
そこで、心理的安全性を壊す「4つのNGな思想」と心理的安全性を確保するための「7つのとるべき行動」を解説します。
4つのNGな思想
優秀なリーダーであればあるほど陥りやすい4つの思考があります。
統制はとれても心理的安全性は低い状態となってしまうので注意が必要です。
- 完璧主義
- コントロール欲求
- 過度の所属欲求
- 犯人探し
完璧主義
メンバーの全ての行動に完璧を求めると、チャレンジ精神がそがれてしまいます。
完璧を求める仕事とそうでない仕事のメリハリをつけ、リーダーが大切だと思っている領域をメンバーにも正しく共有していきましょう。
コントロール欲求
メンバーの思考や行動を自分の統制下に置きたいというコントロール欲求が強すぎると、メンバーの創造性が育ちません。
チームとして成果を出すこと、価値を創出することを意識してメンバーを引っ張っていく存在を目指しましょう。
過度の所属欲求
同じ価値観や意見を持ち一体感がある仲間でいたいという欲求があるかもしれません。
しかし、そのような価値観のままだと新たな気付きを得ることが出来ず組織としての成長が止まってしまいます。
犯人探し
心理的安全性を高める上で最もやってはいけない行為が「犯人探し」です。
ミスが発覚した際に責任の所在を明らかにして、その担当者を厳しく注意すると同じ失敗が減るという意見もあるかもしれません。
しかし、先述のエドモンドソン教授が行った実験では次の結果が得られたそうでうす。
- 責任を追及するチームはミスの報告は減るが、実際には多くのミスを犯していた(ミスの隠蔽)。
- 非難傾向が低いチームはミスの報告は多いが、実施のミスは「責任を追及するチーム」より少なかった。
個人を責めるのではなく、なぜそのミスが発生したかのプロセスに着目して仕事の仕組みを変えていくことを考えていきましょう。
7つのとるべき行動
組織の心理的安全性を高めていくリーダーは、それぞれのメンバーにチャレンジを促しています。
心理的安全性の高い組織を作るためには、リーダーだけの力ではなくメンバー全員で課題に挑みながら生産性を高めていく意識が必要不可欠です。
- 直接話の出来る親しみやすい人になる
- 現在持っている知識の限界を認める
- 自分も良く間違うことを積極的に示す
- 参加を促す
- 失敗は学習する機会であることを強調する
- 具体的な言葉を使う
- 境界を設けその意味を伝える
直接話の出来る親しみやすい人になる
場の雰囲気はリーダーが作るものです。
リーダーが寡黙であればメンバーも気を使って発言が控えめになっていきます。
なんでも相談できる雰囲気を積極的に作っていきましょう。
現在持っている知識の限界を認める
リーダーがすべてを把握しておく必要はありません。メンバーの力を借りてチームとして成果を出すことを意識してください。
リーダーはメンバーの力を効果的に引き出すことに集中してください。
自身の知識の限界を認め、メンバーを頼ることが必要です。
自分も良く間違うことを積極的に示す
リーダーは完璧な存在である必要はありません。
困難に立ち向かう姿勢を見せることが大切で、その過程で失敗してしまったとしても気にすることはありません。
チャレンジしている姿はメンバーにとっては輝いて見えます。
失敗を見せることでリーダーは遠い存在ではないことをメンバーに教えつつ、一歩先の未来を示していきましょう。
参加を促す
リーダー1人の力には限界があります。
仕事はチームで行うものと認識し、メンバーを積極的に巻き込んでいきましょう。
失敗は学習する機会であることを強調する
リーダーが失敗するたびにネガティブな姿勢を見せるとメンバーのモチベーションが下がってしまいます。
チャレンジして失敗したとしても「また一つ賢くなった」とメンバーに前向きな姿勢を示していきましょう。
そうすることでメンバーも失敗を恐れずにチャレンジするようになります。
具体的な言葉を使う
リーダーはメンバーに指示を出す際に「これくらいわかってくれるだろう」と曖昧な表現を用いることはやめてください。
期待していたレベルの成果物が上がってこなかった際にネガティブな雰囲気がチームに広がってしまいます。
何をいつまでにどのレベルで対応してほしいのか具体的な言葉を使うようにしましょう。
境界を設けその意味を伝える
体制を組む際は役割を明確に決めてください。
メンバーに対して各自の役割はどの領域までで、どのようなことを期待しているかをはっきりと伝え責任を持った仕事ができるようにエスコートしてください。
心理的安全性の落とし穴
心理的安全性を追求する際に陥りやすい落とし穴が3つあります。
この落とし穴にはまってしまうとぬるま湯組織になってしまいますので、意識して回避するようにしてください。
- 気を配りすぎる
- 全員の合意をとる
- 話し合いはすべてを解決する
1つずつ解説します。
落とし穴その1:気を配りすぎる
心理的安全性を確保するためにメンバーに自由な発言を促したり、否定的にならないように言葉を選ぶことを意識するあまり自身の心理的安全性が損なわれてしまうという問題があります。
これは心理的安全性を過剰に意識するリーダーや、いい人に見られたいという意識が強いリーダーに多く見られる傾向です。
気を配りすぎると本音で話すことが出来なくなり、反対に本音で話すことを意識し過ぎると対立を引き起こす口調になってしまいます。
組織の調和を保ったまま本音で話すことが出来る環境を作り出すことは簡単ではありません。
落とし穴を回避するためには
「気を配りすぎる」という落とし穴を回避するためには、意識を「人間関係」から「価値創造」に向けてくださいい。
ポジティブでもネガティブでもなく自然体でいることが大切です。
リーダーであればメンバーに対してカッコいい言葉だけを言うのではなく、自身の弱さもさらけ出した上で「組織をよりよくしたい」「価値を提供したい」という情熱を伝えていきましょう。
メンバー全員が自然体で接することで組織の生産性および個人の幸福度が高まる環境が作られていきます。
落とし穴その2:全員の合意をとる
「リーダー不在」「人間関係が希薄」「真面目過ぎる」組織が心理的安全性を追求すると「個人の意見を尊重すべき」という思考に陥ります。
個人の意見を否定せずに全員が納得する答えを見つけるというのは至難の業です。
また、全員の意見をそのまま採用することは対話や議論を放棄していることになり、結果として多数決か議論の先延ばしになってしまいます。
そのような状態ではとても生産性が高い仕事をしているとは言えません。
落とし穴を回避するためには
次の2点を肝に銘じてください。
- 全てのリスクを排除することに固執すると変革する力を失う
- 組織の目的が共有された状態での多様な意見こそ価値を生む源泉である
メンバー全員の意見をまとめることが目的ではありません。
仕事上の目的を思い出してください。その目的に向かって、足を止めず走り続けてください。
人や組織は挑戦することにより成長し、価値を創造できます。
メンバーとの対話を大切にして、仕事を進めながら都度軌道修正しながら、PDCAを回し続けるという意識が大切です。
落とし穴その3:話し合いはすべてを解決する
問題が発生した際に、とりとめもなく議論を進めるだけでは解決につながりません。解決できたとしても時間を要してしまいます。
問題の本質は何か、どのようなアプローチをすれば良いかを適切に見極めて最短で問題を解決していくことが求められます。
問題を解決する際は課題設定の善し悪しがそのまま話し合いの価値に直結するということです。
原因分析や解決案の創出は専門的な知識や多様な経験を持ったメンバーがいないと実施することは困難です。
心理的安全性を意識し過ぎてぬるま湯組織と化した環境においてはメンバーの成長意欲が高くなることはありません。
そのようなメンバーが何人集まったところで良い議論はできないものです。
落とし穴を回避するためには
成長する意欲が無いメンバーだけが何人集まっても有効な解決案は出てきません。
問題提起や課題解決においても個人の専門能力や創造性が重要です。
生産性を上げるためには心理的安全性の確保が必要ですが、心理的安全性を確保したからといって自動的に生産性があるわけではありません。
個々人の成長が根底にあり心理的安全性を基盤とすることで、組織として成長していくことができるということを忘れないでください。
心理的安全性の測定方法
先述のエドモンドソン教授によると心理的安全性を測定するためには次の7つの質問を用いれば良いと提唱しています。
質問に対してポジティブな回答が多いほど心理的安全性が高く、ネガティブな回答が多いと心理的安全性が低いことになります。
チームメンバー全員が心理的安全性を意識して高めていくことが必要ですので、定期的にメンバーにアンケートを取ることが効果的です。
また、リーダーであればこれらの質問を自問自答することで心理的安全性が高い環境を提供できているかを客観的に測定することもできます。
- チームの中でミスをすると、たいてい非難される。
- チームのメンバーは、課題や難しい問題を指摘し合える。
- チームのメンバーは、自分と異なるということを理由に他者を拒絶することがある。
- チームに対してリスクのある行動をしても安全である。
- チームの他のメンバーに助けを求めることは難しい。
- チームメンバーは誰も、自分の仕事を意図的におとしめるような行動をしない。
- チームメンバーと仕事をするとき、自分のスキルと才能が尊重され、活かされていると感じる。
出典:Google re:Work – ガイド: 「効果的なチームとは何か」を知る
まとめ
組織の生産性を向上させるためには心理的安全性の確保が大切です。
心理的安全性を高めることが出来れば業績向上やイノベーション創出と言った様々なメリットがあります。
しかし、「無知」「無能」「否定的」「邪魔」と評価される不安が心理的安全性を阻害する要因となります。
これらの不安を払拭しつつ、安心できる場を作る方法としては「共感しあえる場の構築」と「価値を創出できる場の構築」が必要です。
「共感しあえる場の構築」だけであればぬるま湯組織になってしまう可能性があるため、かならず「価値を創出できる場の構築」をセットで実施してください。
また、リーダーが犯しやすい4つの誤った思考があります。その中でも責任の所在を明らかにしようとする「犯人探し」は心理的安全性を阻害する最もやってはいけない行動です。
反対にリーダーがとるべき行動としては7つあります。
いずれもリーダーは完璧であるべきという考えを改め、チームとして成長することを意識していくべきという内容です。
リーダーだけの力ではなくメンバー全員で課題に挑みながら生産性を高めていく意識が必要不可欠です。
また、心理的安全性を高めていく中で自然とやってしまう「落とし穴」となる行動が3つあります。
1つ目の落とし穴は「気を配りすぎる」です。
気を配りすぎた結果として本音で話すことが出来ず自身の心理的安全性が損なわれてしまいます。
解決策としては、いつでも自然体であることを意識し、人間関係ではなく価値創出に目を向けるようにすることで落とし穴を回避することが出来ます。
2つの目落とし穴は「全員の合意をとる」です。
平等を意識しすぎたりリスク回避のために全員一致を目指す結果何も決まらないという状態に陥ります。
解決策としてはメンバーとの対話を大切にし、仕事を進めながら都度軌道修正していくことで落とし穴を回避することが出来ます。
3つ目の落とし穴は「話し合いはすべてを解決する」です。
話し合いさえ行えば問題はすべて解決するわけではありません。
問題を解決するためには個人の専門能力や創造性を高める努力が必要です。
個人の能力が根底にあり、心理的安全性を確保して組織としてステップアップするという姿勢を持つことで落とし穴を回避することが出来ます。
では、今回はここまで。
最後まで読んでいただきありがとうございました。