品質が大事とよく言われますが、「結局品質って何だろう」「品質ってどうやって高めるんだろう」という疑問が付きまといます。
そこで当記事では「品質マネジメントとは」「品質マネジメントで押さえておくべきポイント」についてわかりやすく解説します。
本記事の執筆者
PMBOKの勉強を進めていくと「10の知識エリア」が登場します。この「10の知識エリア」のうち「品質マネジメント」は成果物やプロジェクト自体の出来栄えに関する領域です。
QCDのバランスをとれと良く言われるように、プロジェクトを成功させるためには顧客が求めるQuality(品質)、Cost(コスト)、Delivery(納期)を確保しないといけません。
1,000万円も払って依頼したシステムが障害だらけ、予定納期を半年も過ぎての納入などQCDのどれか1つでも顧客の期待を下回るとそのプロジェクトは失敗になってしまいます。
プロジェクトを成功させるためには、生成する成果物に対する品質およびプロジェクト自体の品質を高次元で担保することが非常に重要です。
この記事を読めば品質管理としてどのような点に注意すればよいのか、品質懸念が発生した際の対処法について分かるようになりますので、ぜひ最後までお付き合いください。
品質マネジメントとは
はじめに
PMBOK Guideは大きく「フェーズ」「5つのプロセス群」「10の知識エリア」で構成されています。
「品質マネジメント」とは「10の知識エリア」の1つであり、成果物やプロジェクト自体の品質に関する領域です。
品質マネジメント
品質マネジメントについてPMBOK Guideでは次のように定義されています。
ステークホルダーの目標に合致するために、プロジェクトとプロダクトの品質要求事項の計画、マネジメント、およびコントロールに関する組織の品質方針を組み込むプロセスからなる。
引用:PMBOK Guide
注意いただきたいのが”プロジェクト”と”プロダクト”と記載されているように、成果物(=プロダクト)だけでなくプロジェクトの進め方自体の品質確保も重要だということです。
- プロジェクトに対してスケジュールが維持できているのか
- プロジェクト作業が予算内でコントロールできているのか
そもそも品質とは?
そもそも品質とは何なのでしょうか。
国際標準化機構(ISO)による品質マネジメントに関する規格であるISO 9000には「本来備わっている特性の集まりが、要求事項を満たす程度」と定義されています。
つまり、品質とは顧客や自社組織から要求されている事項を「達成すことができる特性」がどの程度備わっているかを意味しています。
品質を確保するためのポイント
品質を確保するために意識してほしいポイントを3つ解説します。
期待値を上げすぎない
案件を受注するためだけに、自身の能力を超えた提案を出してしまうとプロジェクトは失敗します。
世間でAIが流行っているからといって、AIの知識が全くないのに「最新のAIを駆使してお客様に最高の価値を提供します」と言ってしまうとどうでしょうか。
AI技術者の調達はできてもAIを用いたプロジェクトの特性を知らず対応が後手に回ってしまい、結局は「想定以上のコストがかかってしまった」「納期に間に合わない」など悲惨な未来が待っています。
また、顧客は「最新のAIを駆使」という非常に大きな期待を抱いているので、苦労してシステムを作り上げたとしても「なんだこの程度か」と落胆される可能性もあります。
このようにそもそものベースラインが高すぎると、どんなにいいものを作っても品質は低いとみなされてしまいます。
品質は期待からのブレ幅です。
自分たちの実力を把握し、顧客の期待の一歩先を押さえることを意識してください。
COQを確保
適切なCost Of Quality(品質担保にかかるコスト)を確保していくことが大事です。
利益を出すためにプロジェクトメンバーへの教育やテスト工数を削減してしまうと結果として、顧客納品後に不具合が発覚し修正コストがかかるだけでなく信頼の失墜にもつながってしまいます。
品質にかけるコストは大きく「適合コスト」と「不適合コスト」に分類されます。
適合コスト | 欠陥回避のためにプロジェクト期間中にかけるコスト
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不適合コスト | 不良によりプロジェクト期間中および期間後にかかるコスト
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適切な「適合コスト」をかけないと「不適合コスト」の発生確率が上がります。
かと言って「適合コスト」をかけすぎると利益が出なくなってしまいます。
「適合コスト」と「不適合コスト」のバランスを意識することが重要です。
新QC7つ道具を活用
新QC7つ道具とはプロジェクトの品質を定性的に管理できるツール群のことです。
「QC7つ道具」ではダメなの?と思われる方も多いと思いますが、「QC7つ道具」は主に製造業向けであり、システム開発の現場では「新QC7つ道具」が適しています。
- 親和図法
- 連関図法
- 系統図法
- マトリックス図法
- アローダイアグラム法
- PDPC法
- マトリックスデータ解析法
それぞれについて解説します。
親和図法
言語データをグループにわけて、整理・分類・体系化する手法。
問題の親和性や構造が明確になる。
連関図法
原因と結果、目的と手段が複雑に絡み合っている場合に、それらの関係を論理的につなぐことにより問題の構造を明確にする手法。
系統図法
課題とその原因を構造的に表記し対策を整理する手法。
マトリックス図法
ふたつの要素を「列」と「行」に分け、その対応関係を明らかにする手法。
系統図法によって展開した手段の重要度や役割分担などを決定するために用いる。
アローダイアグラム法
問題解決の作業の関係性と時間的つながりを整理する手法。
スケジュール作成時にも用いる。
PDPC法
目標達成までの不測の事態に対応した代替策を明確位にする方法。
2手先、3手先を読んだ行動を促す。
マトリックスデータ解析法
2つ以上のデータを解析することによってその傾向を捉える手法。
品質マネジメントのプロセス
「品質マネジメント」と「5つのプロセス群」との関係性について解説します。
5つのプロセス群との対応
品質マネジメントは「5つのプロセス群」のうち「計画プロセス群」、「実行プロセス群」および「監視コントロールプロセス群」に関係があります。
品質マネジメントと各種プロセス群に含まれるプロセスの関係は下表の通りです。
プロセス群 | プロセス |
計画プロセス群 | ①品質マネジメントの計画プロセス |
実行プロセス群 | ②品質のマネジメントプロセス |
監視コントロールプロセス群 | ③品質のコントロールプロセス |
3つのプロセス
各種プロセスの役割について説明します。
①品質マネジメントの計画プロセス
顧客や自社組織からの品質要求に対する方針などをもとにして、受け入れ基準という制約条件を考慮し、成果物の評価方法や品質基準を設定する。
②品質のマネジメントプロセス
プロジェクト作業の進め方についてPMOなどの第三者の監査を行うことにより作業プロセスを確認する。
このプロセスを実施することによりプロジェクトの品質を担保できる。
③品質のコントロールプロセス
生成した成果物について、テストと評価を行い、品質基準を満たしていることを確認する。
このプロセスを実施することによりプロダクトの品質を担保できる。
まとめ
今回は、「10の知識エリア」の一つである品質マネジメントについて解説しました。
◆品質マネジメントとは「10の知識エリア」の1つであり、成果物およびプロジェクト自体の出来栄えに関する領域である。
◆品質を確保する際のポイントは「期待値を上げすぎない」「QOCを意識する」「新QC7つ道具を活用する」
◆品質マネジメントに関するプロセスは3つある。
では、今回はここまで。
最後まで読んでいただきありがとうございました。