プロジェクト憲章を書いてプロジェクトの目標を定めた。プロジェクト実行計画書も書いてプロジェクトの進め方もばっちりだ。
いよいよプロジェクトを実行するぞ!と意気込んでいたものの実際にプロジェクトを実施すると計画通りに進まないという経験をされた方も多いと思います。
そのため、当記事ではプロジェクト実行において押さえておくべきポイントを解説します。
本記事の執筆者
プロジェクトの始まりはキックオフから
プロジェクトを開始する際は必ずキックオフを実施してください。
キックオフと聞くとサッカーの試合の開始をイメージするかもしれませんが、プロジェクトを開始する際の会議のこともキックオフ会議と呼びます。
キックオフを実施する目的は主に3つあります。
- メンバー全員で同じ目的に向かうためのインプット
- メンバーのモチベーションアップ
- チームの団結力アップ
メンバー全員で同じ目的に向かうためのインプット
プロジェクトのゴールが不明確なままではメンバーが思い思いの作業を実施し、不要な成果物が生み出され、ゴールに向けて遠回りをすることになります。
そこでメンバー全員の意思を統一し、チームとしてプロジェクトのゴールを目指すためにキックオフ会議を実施します。
プロジェクト憲章やプロジェクト実行計画書を用いて、プロジェクトのゴールやマイルストンをメンバーに説明します。
また、就業時間やファイル名称、定例で実施する会議など日々の作業を行う上でのルールを共有しましょう。
メンバーのモチベーションアップ
プロジェクトメンバーのモチベーションを一気に高めてプロジェクトをスタートさせることもキックオフ会議の重要な目的です。
モチベーションを向上させるためには、なぜこのプロジェクトを実施するのか、このプロジェクトを実施すると社会や顧客に対してどのような効果があるのかを伝えることが必要です。
プロジェクト全体の見通しを良くして、メンバーにプロジェクトが成功するビジョンを植え付けましょう。
細かすぎる説明はメンバーのモチベーションを下げてしまうので注意
チームの団結力アップ
大規模なプロジェクトでは複数のパートナー会社がかかわるため、初対面のメンバーが多くなります。
知らない人と一緒にプロジェクトを実施してもコミュニケーション不足による情報伝達のミスや漏れが発生します。
そのため、キックオフ会議では初めにPM(プロジェクトマネージャー)が自己紹介し、その後メンバー1人ひとりにも自己紹介させてください。
キックオフ会議が終わった後にはメンバーが交流できるように雑談の時間を設けると良いでしょう。
人は一緒に食事をとる相手に対して心を開きやすい傾向にあるため、(コロナ禍が終わったら)懇親会も実施した方が効果的です。
キックオフの目的はチームの団結力とモチベーション向上。
プロジェクトの意義を適切に伝え、プロジェクト完了したらどのような効果があるかをイメージさせよう。
また、細かい内容を説明しすぎてモチベーションを下げないようにしよう。
プロジェクト実行中は進捗会議で状況を把握
キックオフ会議を実施してメンバーにプロジェクトの目的とやり方を説明したし、みんな優秀なメンバーだから後は任せておけば大丈夫だろう。
というわけにはいきません。
PMは定期的にプロジェクトの進捗を把握し、計画と実績の間に差異がないかを確認しなければなりません。
差異があれば、その差異を埋めるための施策を考えていくことになります。
進捗を把握するためにはWBSとガントチャートを利用します。
WBSとはWork Breakdown Structureの略で作業工程をタスク単位に分解し構造化した一覧表のことです。
また、ガントチャートとはタスク単位で開始日/予定日および進捗率と後続作業を可視化した棒グラフのようなスケジュール表を指します。
WBSとガントチャートを組み合わせることにより、タスク単位にいつ何を実施する予定で、現在はどの程度の進捗率なのかが一目でわかるようになります。
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定例進捗会議を開催
ある程度大きな規模のプロジェクトではPM一人ですべての進捗を把握することは不可能です。
各リーダにチーム別の進捗を確認させ、進捗会議の場で報告を受けるという方法が一般的です。
進捗会議の開催頻度は1週間に1度の実施が適切です。
毎日だと管理負荷だけがのしかかりますが効果が薄いです。逆に1か月に1回だと問題が起きていても気づくことができず、進捗会議の場で遅延を把握しても手遅れになる可能性があります。
- 週1回の頻度で定例進捗会議を実施する
- 会議では各リーダにチーム別の進捗を報告させる
- 各チーム同じフォーマットを利用させる(PMやPMOが用意する)
- 遅延が発生している場合は、その挽回策もあわせて報告させる
進捗状況はステークホルダーに共有する
PMが進捗を把握したらそれで終わりではなく、進捗状況はステークホルダー(顧客や上司などプロジェクトに少しで関係している人達)に共有するようにしましょう。
進捗状況を共有することで、計画通りに進捗している場合にはステークホルダーに安心感を与え、問題が発生している際にはどのような対策をとっているかを伝えることでPMに対するステークホルダーからの信頼が厚くなっていきます。
プロジェクト中盤で発生する仕様変更
プロジェクトを進めていくと高確率で仕様変更が発生します。
ある日、顧客から「この機能も必要だから追加してほしい」と言われて、「はい、わかりました」とそのまま受けてしまうと、スケジュール遅延やコスト超過が発生することは目に見えています。
このような状況を避けるために、プロジェクト憲章やプロジェクト実行計画書を作成して、顧客と今回のプロジェクトで作成する成果物をプロジェクト開始前に合意しておく必要があります。
プロジェクト開始時点では不透明な要素も多いため、プロジェクトの途中においてもベースラインを顧客と取り決め、そこから変更が発生すれば変更管理として追加必要を請求することを合意してください。
設計書に対する顧客レビューが完了し、設計書の承認をもってベースラインとする。後続フェーズで設計書の修正を伴う変更は仕様変更として扱う。
このような方針で進めることをプロジェクト開始時点で顧客と合意しておく。
※契約書に上記要件を盛り込むことができるのがベスト
変更管理の対象項目
仕様変更が発生した際は、以下の項目を変更管理として押さえておきましょう。
- 仕様変更のタイトル
- 仕様変更の概要
- 変更が発生する対象機能
- 変更を実施する時期
- 変更に要する工数
プロジェクトの終わらせ方も重要
- 成果物を顧客に納品し無事にプロジェクトを終了させた。
- 今回はプロジェクト中断という結果に終わってしまった。
どのような結果であってもプロジェクトが終了となる際は、プロジェクト終了書またはプロジェクト結果報告書を作成しましょう。
プロジェクト終了書を作成する目的は主に2つあります。
- プロジェクトの後片付けをする人への引継ぎ
- プロジェクトで得た教訓を次のプロジェクトに活かす
プロジェクトの後片付けをする人への引継ぎ
プロジェクトが終わっているのに引継ぎって何?と思うかもしれませんが、次のような場合があります。
- 保守フェーズに移行する
- 残課題が残っている
- 顧客への支払いが残っている
- 契約を締めるための手続きが残っている
- 経費処理が残っている
これらがすべて片付いてから本当にプロジェクトが終了したと言えます。
残課題などが残っている状態で、その引継ぎがうまく行われない場合は後々問題が大きくなってプロジェクトがいつまでたっても締まらないという状況になりかねません。
プロジェクト終了書に記載すべき内容
プロジェクト終了書には下記内容を記載しましょう。
- プロジェクトの名称と概要
- マネジメント実績
- 評価および教訓
- 残課題
プロジェクトの名称と概要
将来、類似プロジェクトを実施するときのために当該プロジェクトはどのようなことを実施してきたのかを簡潔にまとめましょう。
マネジメント実績
次の内容を記載しましょう。
- 目標達成状況の総論
- どの成果物がいつ完了したか(細かくなりすぎないように)
- 残課題がある場合は、何が未完了なのかも明記する
- スコープやスケジュールなどの計画に対して、想定通りに実施できたこと/できなかったことを簡潔に記載
評価および教訓
マネジメント実績で記載した内容の深堀を行います。
後進に残しておきたい成功事例や失敗事例を記載します。
成功事例について「再現性」を、失敗事例については「繰り返さないための方法」を意識して記載しましょう。
残課題
プロジェクトを締めるために必要な作業を列挙し、どの作業が完了しどの作業が未完了なのかを記載しましょう。
未完了の作業についてはいつまでに誰が実施するのかを明確にするように意識してください。
プロジェクトで得た教訓を次のプロジェクトに活かす
プロジェクトは組織として遂行します。
プロジェクトをやり切ったからそれで終わりではなく、プロジェクトの中で得た成功事例や失敗事例を社内に蓄積することも仕事の1つです。
プロジェクト終了書には「評価および教訓」を記載しましょうと前項で述べましたが、この“教訓”が最も大事です。
プロジェクト進行中の良かった点・悪かった点をプロジェクトメンバーにヒアリングし、管理目線だけでなく現場目線での教訓も残すようにしましょう。
将来実施するプロジェクトのPMがこの教訓を読むことで、成功するためにやるべきこと、やってはいけないことを把握でき、より高度なマネジメントを実施することが可能となります。
まとめ
今回は、プロジェクトを実行するに当たり押さえておくべきポイントを解説しました。
◆プロジェクト開始時にキックオフを実施してチームの団結力とモチベーションをアップさせよう
◆プロジェクトの状況を適切に把握し、問題が見つかったらタイミングを逃さず対処すべき
◆仕様変更の発生は避けられないが、炎上しないように適切な対処が必要
◆成果物納品したらプロジェクト終了ではない、後片付けも意識してプロジェクト終了書を作ろう。
◆プロジェクトの教訓を残して、次のプロジェクトに活かそう。
では、今回はここまで。
最後まで読んでいただきありがとうございました。