PM(プロジェクトマネージャー)になるとスケジュール表を作成したりクライアントと仕様を調整したり、進捗を確認して報告書を作成したりと大忙しです。
ただでさえ忙しいのにメンバーやクライアントからの問い合わせが来たり、遅延が発生しリカバリに追われるといくら時間があっても足りなくなってしまいます。
そこで当記事ではPMが時間を作るために実践すべき「時間管理術」を解説します。
本記事の執筆者
PMが自ら作業を抱えるとプロジェクトが破綻することは容易に想像できると思います。
本来PMがやるべきことはプロジェクト全体を見渡し問題を最小限に抑えたり、メンバーを効果的に動かすために「考える」ことです。
そこで、ライフワークバランスを保ちつつ楽にプロジェクトを成功させることを目的にPMの役割である「考える」という時間をいかに効率的に作り出すかを紹介していきます。
PMの役割
PM(プロジェクトマネージャー)はその名の通りプロジェクトの管理者です。
与えられたゴールに向かって突き進むのではなく、その時々の状況を見極めプロジェクトを成功に導くのが役割です。
同時にプロジェクト管理だけでなくクライアントに対する”受注者”としての役割、パートナーに対する”発注者”としての役割、社内に対するプロジェクトの”責任者”としての役割があります。
いずれの役割も決して「作業」ではなく「考える」ことが求められます。
「考える」時間を作ることができれば、緻密なプロジェクトの戦略を練ることができ、それに従ったスケジュールを検討できます。
また、ステークホルダーとの関係を良好に保つこともでき、結果として大きな遅延を発生させることなくプロジェクトを成功に導くことができるようになります。
この「考える」時間をPMがいかに捻出できるかがプロジェクトの成否に直接関わってきます。
次章以降でPMが「考える」時間を捻出するために実践すべき5つの方法を紹介します。
重要な仕事は午前中に片づける
脳科学者である茂木健一郎氏は「朝目覚めてからの約3時間は、脳が最も効率よく働く“ゴールデンタイム”だ」と述べています。
このゴールデンタイムを有効活用しないわけにはいきません。脳が一番働く時間に一番重要な仕事を片付けてしまいましょう。
より効果的に時間を使うために「メール確認は後回し」「誰よりも早く出社する」を意識することが大切です。
メール確認は後回し
多くのビジネスマンが出社して最初に行うタスクは「メール確認」ではないでしょうか。
朝のゴールデンタイムをメール確認に費やすのは非常に勿体無いことです。
そのため、メールはタイトルを見て急を要しそうなものだけ中身を確認し、その他は後回しにしましょう。
誰よりも早く出社する
始業時間が朝9時の会社であれば7時や、8時など他のプロジェクトメンバーが出社する前に業務を始めることで、誰にも邪魔されずに集中して物事を検討する時間が確保できます。
重要なタスクを朝一で片づけることで達成感や満足感を得ることができて、その後も精神的に平穏な一日をおくることができます。
効率的な会議を開催する
PMはプロジェクトメンバーから意思決定を求められる役割であるため必然と会議が多くなります。
1つ1つの会議を適当に対応すると、決定事項が下せず会議を再調整したり、判断が誤っており手戻りが発生する可能性があります。
「結論が出ない」、「開催者だけが話続けて、メンバーは誰も発言しない」と言った会議は開催する意味はありません。
会議のルールを設定する
会議を短い時間で効果的なものにするためにはプロジェクト立ち上げ時に会議のルールを設定するようにしましょう。
具体的には下記の3つのルールが効果的です。
- 会議の目的を事前に連絡する
- 議題や方針をあらかじめ伝えておく
- 会議は30分で必ず終わるようにする
このルールは「各リーダがPMに判断を仰ぐ場合」と「PMから各リーダに意見を聞く場合」の双方に効果を発揮します。
ルール設定の効果
会議室に入って初めて議題を把握し、その場で質疑を通して方針を決めていくやり方をしていると何時間あっても足りません。
また、会議主催者が一方的に話して出席者はその内容を聴くだけで質問が無い場合も、それは会議ではなく業務連絡でありメール&周知で十分です。
生産的な話し合いをするために、あらかじめ何を決めるための会議かを周知し、どのような課題があり、どのような対応案があるのかを連絡するようにしてください。
さらに、会議時間を30分と短く設定することで参加者はあらかじめ意見をまとめておくようになり、会議の場では認識合わせと意思決定に徹することが出来るようになります。
そうすることで、非生産的な会議がなくなり長い目で見ても手戻りも発生することがなくPMとして「考える」時間を確保することに繋がります。
セルフ会議の時間を設ける
集中したい時間帯にはあらかじめスケジュール表に予定を入れ、周りのメンバーから打ち合わせを入れられないようにしましょう。
時には会議室を予約し、一人で集中できる時間を確保してみるのも効果的です。
遅延を発生させないスケジュールを立てる
PMがすべてのスケジュールを立案する必要はありません。細かいスケジュールは仕様を深く理解している各リーダに任せればよいのです。
また、スケジュールを立てる際にはバッファの取り方を工夫することで遅延が発生しづらくなります。
PMがやるべきこと、遅延を発生させないことを意識して「考える」時間を確保しましょう。
PMは大日程を設定する
PMはプロジェクト全体を俯瞰して各種フェーズがいつどのように関連しあうのかを表す大日程を立ててください。ここにPMが考えるプロジェクトメイキングが集約されます。
大日程は大きなプロジェクトであれば月単位で表現することになります。より具体的に表現するとしても週単位の中日程までを検討するようにしてください。
この大日程もしくは中日程を各リーダに提示し、各リーダにフェーズの期間やマイルストンを意識した詳細日程を立ててもらうようにしましょう。
バッファの取り方
スケジュールを立てたものの「チームリーダーが多忙で打ち合わせの時間が取れない」、「顧客に質問を投げているのに全然返事がない」などに影響され遅延が発生していきます。
スケジュールを作成する際はこういったことを事前に予期してスケジュールにバッファ(作業の予備時間)を設定しないといけません。
ただし、各作業毎にバッファを設置すると「パーキンソンの法則」によりあまり効果がでません。
パーキンソンの法則
夏休みの宿題を最終日にまとめてやるように、人は時間や資源の余裕を残さず使い切ってしまうという法則
そこで、バッファはマイルストン直前やフェーズ終了の直前にまとめてバッファを設けることが効果的です。
捨てる力を磨く
プロジェクトを成功させるためにはQ(Quality:品質)、C(Cost:コスト)、D(Delivery:納期)のバランスが重要です。
品質を求めすぎるとコストや納期が圧迫します。
時間とお金は有限です。何かを求めると何かを捨てなければいけません。
特にPMは全体最適を考えて判断することが重要です。
全体最適を考える
仕事全体の効率や生産性を最適化することを「全体最適」と言います。
反対に個々の業務を最適化することを「部分最適」と呼びます。
人は目に見えている問題を早く片付けてしまいたくなるので、知らず知らずのうちに部分最適の考え方に従って物事を判断してしまうようになります。
しかしPMは常に「全体最適」を意識するようにしてください。
例えば、タスクAが遅延した場合にスケジュールに余裕のあるタスクBの担当者をタスクAのリカバリに充てたとしましょう。そうすることでタスクAは遅延を回復しタスクBは少しの遅延が発生し一見バランスが取れたように見えます。
しかし、タスクBがクリティカルパス上のタスクだったとするとどうでしょうか。本来はタスクAが遅延していても時間をかけてリカバリしていけばよかったものの、タスクBを遅延させてしまったことでプロジェクト全体の遅延という問題に発展してしまいます。
このように全体を見渡して、どこに力をかけるべきかを見極めることが重要です。そうすることで、不必要に特定のタスクに工数をかけることがなくなります。
その結果、スケジュールを圧迫することもなくなるためプロジェクト全体の遅延防止につながります。
やらないことを先に考える
あれもやらなくては、これもやらなくてはとタスクで溢れかえっていると落ち着いて「考える」ことはできません。
そこで、優先順位ならず「劣後順位」を決めることをお勧めします。
- まずは自身が抱えているタスクを全て書き出します。
- 次に「やらなくてもいいタスク」の順番を決めます。
- そして「劣後順位」の中で先延ばしにする or 思い切ってやらないタスクを決めます。
作業はメンバーに任せる
繰り返しますがPMは「考える」ことが仕事です。
メンバーがやれる仕事はPMもできるかもしれませんが、PMがやるべき仕事は役割上メンバーにはできません。
そのため、「作業」は各メンバーに割り振るようにしてPMはプロジェクトをいかに最適化するかを「考える」ことに注力してください。
PMが率先して早く帰宅する
プロジェクトの中でPMが一番遅くまで残っていると、プロジェクトメンバーは自身のタスクが終わっていても帰宅しづらいものです。
PMが帰らないから早く仕事を終わらせても無駄だとメンバーが思うようになったらおしまいです。
メンバーは「パーキンソンの法則」に従い平均帰宅時間いっぱいまでダラダラと仕事を続けることになります。
そうなってしまうと生産的な仕事はできず、メンバーのワークライフバランスも崩れてしまい、挙句の果て設計ミスやコミュニケーションロスなど様々な問題に発展していきます。
こうならないためにもPMは朝早く出社して、夕方早くに帰宅するようにしてください。
著者の経験上、いくらPMが朝早く出社してもメンバーは始業時間より30分程度早く出社するようになるだけで朝7時や8時に出社するようにはなりません。
遅刻者は減るし、メンバー全員が早く帰れるようになるので良いこと尽くしです。
まとめ
PMの役割は作業ではなく「考える」ことです。
この「考える」時間をPMがしっかりと確保し、戦略的にプロジェクトを推進することが出来れば大きなトラブルがなくなり結果として楽に大きな成果を出せることになります。
そのためには次の5つを意識して行動するようにしてください。
- 重要な仕事は午前中に片づける
- 効率的な会議を開催する
- 遅延を発生させないスケジュールを立てる
- 捨てる力を磨く
- PMが率先して早く帰宅する
重要な仕事を午前中に片づけるために、出社して最初にすることはメール確認ではありません。早く出社し1人で集中できる時間帯にその日にやるべき重要なタスクを片付けてください。
会議は短時間で最大の効果を出せるようにあらかじめルールを決めておくと効果的です。
また、遅延を発生させないようにバッファの取り方を工夫したスケジュールを立てることでトラブルが発生しても余裕をもって対応できるようになります。
そして、PMがやらなくてよいことを決めて作業は各メンバーに任せてください。その時間を使ってプロジェクトがうまく推進するように「全体最適」を考えるようにしましょう。
最後に、PMが率先して帰ることでプロジェクトメンバーも早く帰ることが出来る風潮を作りライフワークバランスを充実させ、”楽”にプロジェクトを成功させましょう。
では、今回はここまで。
最後まで読んでいただきありがとうございました。