PMBOK(ピンボック) Guideとは、マネジメントに関する一般知識を体系化した世界共通の教科書です。
日本語では「プロジェクトマネジメント知識体系(ガイド)」と呼ばれています。
管理職になりプロジェクトをマネジメントする立場になるとPMBOKという言葉を耳にするようになります。
気になってネットで検索してみても、難しい用語が並んでいて理解するまでに相当な時間を要します。私もその一人でした。
そこで今回はPMBOKとは何かをかみ砕いて解説します。
PMBOKとは何なのか、PMBOKの全体構成、PMBOKを用いる際の注意事項がわかるようになりますので、ぜひ最後までお付き合いください。
※本記事はPMBOK Guide 第6版について記載しています。
2021年8月にリリースされた第7版はアジャイル開発の考え方を取り込んだ内容となっています。
一方、第6版はウォータフォール開発の考え方がベースになっています。
新しい考えかたが良いと思われる方も多いと思いますが、大企業を中心にまだまだウォータフォールの開発手法に頼っているのが現状です。
そのためPMBOK Guide 第6版を学んでも無駄になることはありません。
むしろ押さえておくべき必須知識です。
PMBOK Guideとは
はじめに
初めに「PMBOK」と「PMBOK Guide」の違いについて説明します。
PMBOKとは「Project Management Body Of Knowledge」の略称を指しており、プロジェクトマネジメントの知識体系を定義したものでプロジェクトマネジメントの業界標準です。
一方、PMBOK Guideはこの知識体系を記述したガイドブックであり、プロジェクトマネジメントの基本的な考え方、プロセス、ツール、テクニック及び用語を解説するものです。
プロジェクトマネジメント知識体系ガイド PMBOKガイド 第6版(日本語) 新品価格 |
PMBOK Guide の運営者
PMBOK Guideは PMI(Project Management Institute)と呼ばれる組織により運営されています。
※日本語では「プロジェクトマネジメント協会」と呼ばれています。
PMBOK Guideの初版は1996年に発行されており、2017に第6版、2021年には第7版が発行されています。
PMBOK Guideの位置づけ
PMBOK Guideは特定の業種に向けたものではなく、マネジメントの一般知識を体系化したグローバルスタンダードです。
そのためIT業界をはじめとして、建設業や重工業系、広告業界といった様々な業界・業種でPMBOK Guideの考え方は導入されています。
このように、システム開発の世界でしか通用しない!といったことはなくマネジメントを行う上での共通フレームワークがPMBOKなのです。
もちろん、日本だけではなく世界共通のフレームワークなので、PMBOKを勉強することでグローバル化が進む世の中で生き残るための最強スキルが手に入ります。
また、マネジメントスキルが備わっているかどうかを確認する手段としてPMPがあります。
PMPとは
PMPとは「Project Management Professional」の略称であり、PMBOK Guideの理解度を評価するための資格でPMIが認定しています。
PMBOK Guideはグローバルスタンダードであるため、PMPを保持していればマネジメントの知識・経験を保有していることを世界的に証明できます。
※名刺にPMPのロゴを記載している方も数多くいらっしゃいます。
PMBOK Guideの全体構成
PMBOK Guideは「フェーズ」と「5つのプロセス群」、「10の知識エリア」で構成されています。
「フェーズ」毎に「5つのプロセス群」があり、その1つ1つのプロセス群の中に「10の知識エリア」が存在するイメージです。
フェーズ
フェーズとは特定の作業工程を示しており、例えばIT関連では「基本設計フェーズ」や「詳細設計フェーズ」などがあります。
PMBOK Guideでは次のように定義されています。
論理的に関連のあるプロジェクト活動のまとまりであり、1つ以上の成果物の完了をもって終了する。
出典:PMBOK Guide
5つのプロセス群
個々のフェーズは次の5つのプロセス群で構成されています。
- 立ち上げプロセス群
- 計画プロセス群
- 実行プロセス群
- 監視コントロールプロセス群
- 終結プロセス群
各種プロセス群の紹介
立ち上げプロセス群 | 経験やスキルを把握するためにステークホルダー(関係者)を特定する。 |
---|---|
計画プロセス群 | 各フェーズを進める上で必要な計画書を作成する。 |
実行プロセス群 | 計画書に基づいて作業を進め成果物を生成する。 |
監視コントロールプロセス群 | 計画と実績の差を確認し、開きがある場合は対処する。 |
終結プロセス群 | 成果物をクライアントに納品し、次フェーズにノウハウを残す。 |
お気づきでしょうか。
5つのプロセス群にはPDCA[計画(P),実行(D),監視(C・A)]が含まれています。
立ち上げプロセス群で軌道に乗せ、PDCAサイクルを回してプロジェクトをより良いものにし、終結プロセス群できれいに終わらせるという構成になっています。
プロセス群の構成要素
プロセス”群”という言葉が示す通り、いくつかのプロセスが集まってプロセス群を構成しています。
例えば「立ち上げプロセス群」の中には
- プロジェクト憲章の作成プロセス
- ステークホルダーの特定プロセス
の2つが含まれています。
PMBOK全体では49のプロセスが存在します。
10の知識エリア
プロジェクトマネージャーが注意を払うべき10の領域のことを「10の知識エリア」と言います。
- プロジェクト統合マネジメント
- プロジェクト・スコープ・マネジメント
- プロジェクト・スケジュール・マネジメント
- プロジェクト・コスト・マネジメント
- プロジェクト品質マネジメント
- プロジェクト資源マネジメント
- プロジェクト・コミュニケーション・マネジメント
- プロジェクト・リスク・マネジメント
- プロジェクト調達マネジメント
- プロジェクト・ステークホルダー・マネジメント
各種知識エリアの紹介
統合マネジメント | 他9の知識エリアを統括し、プロジェクト全体または各フェーズをどのように進めていくかを定義する領域。
詳しくはコチラ↓↓ |
---|---|
スコープ | 作業範囲および成果物に関して定義する領域。
詳しくはコチラ↓↓ |
スケジュール | 納期管理を行う領域。
詳しくはコチラ↓↓ |
コスト | 予算の策定に関する領域。
詳しくはコチラ↓↓ |
品質 | プロジェクト全体および成果物の品質に関する領域。
詳しくはコチラ↓↓ |
資源 | 人的資源および物的資源の管理に関する領域。
詳しくはコチラ↓↓ |
コミュニケーション | 会議予定など、コミュニケーションの内容および方法を管理する領域。
詳しくはコチラ↓↓ |
リスク | リスクの特定、分析、対応方法、対策実行、監視に関する領域。
詳しくはコチラ↓↓ |
調達 | 契約やベンダー管理に関する領域。
詳しくはコチラ↓↓ |
ステークホルダー | ステークホルダーの関与度定義や管理に関する領域。
詳しくはコチラ↓↓ |
「5つのプロセス群」と「10の知識エリア」の関係
「5つのプロセス群」の1つ1つのプロセス群の中に「10の知識エリア」全てが含まれているように説明しましたが、実際は対応がない領域も存在します。
例えば「立ち上げプロセス群」×「スコープの知識エリア」には該当プロセスが存在しません。
注意事項
PMBOK Guideはグローバルスタンダードの管理手法ではありますが、幅広くカバーしているためあなたの業界に完全にフィットしているかというと、そうではありません。
PMBOK Guideは基礎概念としてしっかりと押さえておき、そこからご自身の業界に合うように取捨選択し(これをテーラリングと言います)、さらにノウハウを積み重ねていくことでより強固なものになっていきます。
とはいえ、基礎を知らないと応用もできないのでPMBOK Guideの内容をしっかりと押さえることが重要です。
プロジェクトマネジメント知識体系ガイド PMBOKガイド 第6版(日本語) 新品価格 |
まとめ
今回は、PMBOK Guideの基礎知識と全体構成を解説しました。
◆PMBOK GuideとはPMIが発行しているグローバルスタンダードの管理手法である。
◆PMBOK Guideを理解するには「フェーズ」「5つのプロセス群」「10の知識エリア」を押さえておく必要がある。
◆各「フェーズ」の中に「5つのプロセス群」があり、各プロセスの中に「10の知識エリア」がある。
◆「5つのプロセス群」と「10の知識エリア」のマトリクスは必ず埋まるわけではない。
◆PMBOK Guideはあくまで基礎。あなたの業界に沿ってテーラリングや上積みが必要。
では、今回はここまで。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
通勤時間を利用して効率的に勉強したい方へ、書籍をプロの声優・ナレーターが読み上げた「耳で聴く本」=audiobook.jpがおすすめです!